キャッシュフロー経営とは,キャッシュフローを測定手段として,「企業価値の最大化」を目標とする経営のことをいいます。ここでの企業価値とは,企業が生み出す「将来の期待キャッシュフローの現在価値」として定義されます。
企業の市場評価は株価として反映されますが,株価は会計上の利益よりキャッシュフローとの相関関係が強くなっています。それゆえアニュアルレポートでも,会計数値と同時にキャッシュフロー情報が重視されています。
又キャッシュフローは理解しやすい共通言語として,事業価値の測定にも,個別プロジェクトや投資計画にも共通の尺度として使用することができます。
キャッシュフローは経済原理により近い概念であり,時間とリスクが反映されます。これが期間損益や発生主義という人為的コンベンションにより計算された会計利益との違いです。
会計利益は人為的慣習の上に成立しています。たとえば,在庫の増加は会計利益の増加を意味します。しかし在庫の増加を経済利益の増加と考えない経営者も多いのではないでしょうか?在庫は売れることが確実な場合に限り価値があり,在庫を寝かしておくことは資金の利子の無駄使いでもあります。キャッシュフロー経営では在庫の価値は,将来キャッシュフローの現在価値で計算され,売れ残りは資本利子分だけ減価されます。このような認識は,より現実感覚に近いといえます。しかし反面,キャッシュフロー思考は,未来の予測に左右されやすい欠点があります。
これを欠点と考えるか,経営環境の反映と考えるかで,会計利益とキャッシュフロー利益の支持が分かれるでしょう。
キャッシュフロー計算書は今まで財務諸表のひとつと看破されていなかったため,一般に十分理解されていないかも知れません。
キャッシュフロー計算書では,キャッシュフローは,3つに区分されています。
営業キャッシュフロー (Cash Flow from Operations
)
投資キャッシュフロー (Cash Flow for Investments)
金融キャッシュフロー (Cash Flow for Financing
)
会計上の利益から営業キャッシュフローを加減した差額が「営業キャッシュフロー」であり,そこから投資キャッシュフローを差し引いた差額が「フリー・キャッシュフロー」,さらに金融キャッシュフローを加減した最終差額を「ネット・キャッシュフロー」と呼びます。
フリー・キャッシュフローは,企業の経営活動の資金状況を判断する指標としてよく使われます。フリー・キャッシュフローが不足する場合,資金調達を行うことになります。
将来キャッシュフローは,社員全員が理解するのは難しいし,年度単位での会計利益との関係をつかみたいという要求もあります。
そこで考案されたのが「経済的利益(Economic
Profit)」という指標です。これは,各年のみなしの価値創造を表現したものであり,「経済的付加価値(EVA)」とも呼ばれています。
経済的利益は,税引き後利益±(運転資本増減+設備資本増減)×資本コストで計算されます。
経済的利益ないしEVAは,会計ルールと同じようにある人為の仮定を設定することにより,将来キャッシュフローのもつ未来予測の難点を克服し,同時に期間計算を可能にします。EVAはむしろ株価理論として,企業価値の指標として使われています。
会計的には,企業の価値とは,純資産の額です。しかし,この金額が本当の企業価値と信じている人はいないでしょう。キャッシュフロー理論では,この価値を将来キャッシュフローの現在価値とし,その近似値としてEVAを生み出したのです。
事業部単位等で投下資本と利益率をキャッシュフロー・ベースでみていくと資本利益率以上の利益を上げている事業部とそれ以下の事業部が判明します。前者は価値を生み出している事業部であり,後者は価値を破壊している事業部です。
価値を破壊している事業部については,価値を高める要因であるバリュー・ドライバーを見出して改善していかねばなりません。
一般的なバリュー・ドライバーは
@売上高成長率
Aキャッシュ・ベース利益率
B税金
C投資
D運転資本
E資本コスト
F競争優位期間
の7つです。(Rappaport1996年)
これらのバリュー・ドライバーを目標として,互いの関連性をモデル化した上で企業価値を高めるプロジェクトを実施していくのが,バリュー・ベースト・マネジメント(価値創造経営)といわれている方法論です。
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