バランスト・スコアカードは,業績測定の新しい包括的フレームワークです。バランスト・スコアカードでは,従来のように財務的業績評価指標のみに頼るのではなく,「財務」,「顧客」,「内部プロセス」,「革新」といった多角的視点で業績を評価していきます。
バランスト・スコアカードの利点は,最近の経営トピックであるキャッシュフロー,ABC,顧客志向,スループット,知識創造といったテクニックをまとめあげるバランスのとれたフレームワークを提供していることです。
バランスト・スコアカードは, 「@財務」,「A顧客」,「B内部プロセス」,「C革新」という4つの視点で業績の評価を行います。
現在でも,営業では顧客に関する評価軸があり,工場ではプロセス改善の努力目標があります。スコアカードは,これらの部門指標を全社的に統合させる試みです。
「財務」の視点は,伝統的業績評価の範疇です。
バランスト・スコアカードでは,財務の視点は,統合指標として機能しています。会計数値は,結果として戦略の妥当性の判断基準となります。会計については,日本でも「キャッシュフロー計算書」の財務諸表化によって,キャッシュフロー・ベースの財務指標が増えていくことでしょう。
大多数の企業では,「顧客満足度」を企業ミッションに掲げていますが,ミッションを業績の指標として設定している企業は必ずしも多くないようです。
「顧客満足度」の指標は定性指標であり,それと企業利益の関係も必ずしも明確ではありません。むしろ,顧客ロイヤリティの方が測定しやすく,利益に相関しているのかもしれません。具体例として,「苦情発生から解決までの期間」を,指標のひとつとしているスカンジナの例などがあります。
プロセスの効率性,効果性に関する指標は,従来は工場内での管理で使われたり,各部門内で使われてきました。
ビジネス・プロセスのコストを計算するテクニックとしては,ABCが利用でき,ABMのテクニックを利用して,プロセスの改善や革新を図ることができます。短期的には,スループット会計の指標も有効でしょう。
業績評価の指標として,「コスト」以外に「時間」,「品質」等の会計以外の指標が使われることも多い領域です。
革新や創造は,次第に企業戦略の中心課題になりつつあります。
ここでの業績指標として, 「知識創造のしくみ」に関するインフラ整備等を例として掲げることもできるでしょう。具体例として,3Mの新製品比率などが有名です。
バランスト・スコアカードは,業績指標の単なる体系化ではありません。業績指標は,因果関係がお互いに関連づけられ,設定された目標に向かって組織を方向付けるために使われなければ,結果をだすことはできません。
「業績モデル(Performance Model)」は,戦略遂行のため必要とされる行動とその業績指標を表現したモデルです。このモデルによって,組織の行動は,透明性をもち,コミュニケーションが容易になり,組織全体で戦略を考えることができるようになります。
業績モデルは,一度で完結するわけではなく,仮説と検証の手続きを繰り返しながらより妥当性をもつようになっていきます。
バランスト・スコアカードは,ビジョンを組織全体に伝達し,組織の知恵を集めて戦略を形成する役割を果たします。戦略の実行は,それを実行する人を教育し,巻き込むところから始まります。戦略は,トップマネジメントだけで立案されるのではなく,組織全体で形成されていくプロセスです。
バランスト・スコアカードは,戦略を行動に結びつけるためのツールなのです。
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