経理部および財務部を含めた会計機能について,将来の展望を検討していきましょう。
アメリカ企業は一般的に会計と経営が密着しています。すなわち計数による管理が経営の要となっておりコントローラとよばれる部門が原価や投資機会の分析をしています。そして会計の中心は管理会計に移行しています。
これに対して,日本の経理は,税務の虜になっていることが多く,経理を経営の武器にしようとする思考が希薄です。減価償却費を定率法で計算し引当金を税法基準で計上していては、会計を意思決定の道具として利用するなど非常に困難でしょう。
会計専門家のすべき仕事は,業務および経営の支援です。堅実が経理マンの資質ではなく,経済性(費用対効果)が会計をベースとした支援の基本であるべきです。
経理部の役割は,会計記録をおこなう「スコアキーパー」から,企業価値を高める「ビジネスパートナー」へと移行していく必要性があります。スコアキーパーの役割はコンピュータに置き換わりつつあり,経理が価値を主張するベースは企業価値への貢献に見出されるべきだからです。
「スコアキーパー」から脱却するためには,従来以上に会計処理を合理化,省力化し,時間を創り出していく必要性があります。
会計帳簿記帳,財務諸表作成,連結財務諸表作成,キャッシュフロー計算書作成,税務申告用資料作成といったルーティーン業務に費やす時間はコンピュータを利用することにより削減していくべきです。
創り出された時間は,意思決定の質を高め,企業を正しい方向に導く業績評価のしくみを立案,実施していくために使われなければなりません。「ビジネスパートナー」が,経理部の新しい役割です。
業績評価は,予算や目標との関係で行われているのが日本企業の一般的スタイルです。予算は年度予算の形で設定され,戦略と結びついていないことが多くあります。目標による管理は,ほとんどの大企業で採用されていますが,ここでも目標が戦略と結びついているという保証はありません。
業績測定(Measurement)は,現在最もホットなテーマです。測定は,戦略と行動を結びつける架け橋です。企業における測定は,会計数値だけではありませんが,会計は最終的な企業業績を表現します。
戦略を効果的に実施するためには,戦略と行動を結びつける業績指標と業績モデルが必要です。測定は,情報システムと結びつた時,伝統的会計理論では考えられなかったようなリアルタイムな経営支援機能を実現します。
会計業務にコンピュータを利用していない大企業はないでしょう。今後は更に,業務と測定の融合を図り,業務意思決定と測定の関係を限りなく一体化していくことでアジル経営がなされます。
サプライチェーン・マネジメントでおこなわれる「スループット会計」,業務改善で使用される「アクティビティ・ベースト・コスティング」等の新しい考え方を検討してみては如何でしょうか。又,多面的業績評価システムのアイデアとしては「バランスト・スコアカード」の利用を検討されると良いかもしれません。
株主利益を最大化するため、M&Aを含めた投資計画、業務改善計画を提案したり、その妥当性を検討するのが大企業の経理マンの仕事です。
投資計画は,キャッシュフローの現在価値で測定する方法がアメリカ企業では一般的ですが,何故か日本では使用する企業が多くありません。
将来に対する不確実性に対しては,シナリオによるシミュレーションを利用することで現在価値法を実用化できます。
改善計画もキャッシュフロー・ベースによる費用対効果の計算が説得力をもちます。これは「価値創造経営」といわれています。会計は「意見」であり,キャッシュは「事実」であるという人もいます。M&Aの事業評価にキャッシュフロー手法を使う時,キャッシュが「事実」であるとは,とても思えませんが,少なくとも,キャッシュは理解しやすく行動に結びつけやすい指標です。
私は,会計利益の代わりにキャッシュを使う理由は,わかりやすいということと,会計から陳腐な会計ルールを取り払い経済/金融理論を導入するためのスタートだと考えています。経理マンは,投資計画に必須の時間とリスクをわかりやすく,理論的に経営者に提示する必要性があるのではないでしょうか?
日本の税務は複雑な上,特に最近は企業がコンピュータシステムを使って会計処理を行っていることを全く考えていないような規定の変更をします。
税務計算に固有の体系的会計理論はありません。このような社会的計算規定による税務計算はパッケージシステムが最も適合するものであり,既にいくつもの安価な税務申告書作成パッケージが存在します。税務計算自体は,税効果会計も含めてシステムを利用すべきです。
税務管理の重要性は,税務や財務会計上の計算にあるのではなく,税金そのものの計画にあります。
税金という利益の半分を占める費用に対し、国際的な税務戦略を立案する税務計画が大企業の経理マンとしての仕事のひとつに考えられます。
税務計画は,投資計画やシェアード・サービスにおいても重要です。
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